16人目線

  • 2013/11/04(月) 22:11:51


2004年5月に刊行された本で、

すごく気になっていた小説があるので

読んでみましたよ




新選組幕末の青嵐 [ 木内昇 ] 集英社文庫





もちろん新選組の話なんですけど、

一般的な小説とは

チョッと違った書かれ方をしていましたね。





それは「登場人物の目線で描かれる」というものです。

しかも目線は一人だけではなく、16人のメンバーが

かわるがわる話の主役になりながら、

新選組のストーリーが展開されていくんですよね。





例えば、最初の「暗闇」は

土方歳三の目線で描かれていますよ。





なにもすることがなく、しかたなくやっている薬の行商。

その行商箱に剣術の防具をつけて、

自分の行くべき方向を見つけられず彷徨う、

歳三のぼやきを感じることができます。





また「試衛館」では、一風変わった沖田総司が、

実際にどんなことを感じているのかがわかりますし、

「浪士組」では、近藤勇がどういうつもりで

浪士隊に加わろうとしているのかを、

察することができます。





話の都度、主役が変わるので、最初は

「読みにくいかな?」と思いましたが、

そのうち気にならなくなりました。





それよりも読み進めていくうちに、

感情が表には出にくい永倉新八の胸の内や、

己さえ気付かなかった斎藤一の

「本当の気持」が感じられ、

どんどん話に惹かれていったのです。





特に、「局中法度」「覚悟」では、

井上源三郎目線で見た土方歳三が描かれていて、

それが、とてもいいのですよね〜




多摩の人々に接する歳三と、新選組局内での歳三と、

その二つを見ている源三郎しかわからない、

歳三の動かざる真の部分が見えるのです。





よく小説では、歳三は「死に場所を求めている」

ように描かれることが多いのですが、ここでは

「自分の信念のままに生き抜く」歳三が描かれます。





その信念があるから、新選組局内で

どんな事件があってもブレないし、

「武士として潔く死ぬ」ことより、

「信念を貫くために生きる」ことを選ぶのです。





もしその行動の途中で死ぬことがあるなら、

それは覚悟の上でのことなのでしかたない

と歳三は考えます。






また非情な彼の中には、

信じる者への絶対なる信頼があって、

彼の情の深さも感じることができます。

それらに、歳三の凄さの中に温かさまでもが感じられて、

歳三ファンには嬉しい作品になっていますよ




もうひとつ印象に残るのは、

沖田総司の最期でしょうか。





今までの小説では、

孤独に死んでいく総司の最期は

悲しくて寂しい描かれ方をしています。

でもこの小説では「自分の極める剣の道に

また一歩近づいた」という描かれ方なんですよ。





総司は1つの剣の道を極め、

「次の場所」へと進んでいくのです。

ですから捉え方によっては、寂しいというより

温かい気持にもなれるのですよね





話の展開は史実の通り、

試衛館メンバーはバラバラになっていきますが、

どこか心情的には、再び1つなっていくようにも感じられて、

他の物語とは違って、チョッと心温まる小説でした。





一人目線だったら語り尽くせない

それぞれの登場人物の胸のうちを、

複数目線で描くことにより感じることができるのが、

この小説の特徴ですよ〜。

ですからある意味、欲張りな物語といえますね。




どうぞ興味があったら、読んでみてくださいね。




あっ、ちなみに著者の木内 昇氏。

男性だと思ったら、女性でした

どおりで、心情描写が細やか過ぎるほど細やかだな〜

と感じました。

どうぞその辺りも、読んで確かめてみて下さいね。


新選組幕末の青嵐 [ 木内昇 ]/集英社文庫
けっこう分厚い文庫本でしたが、
一気に読めちゃいました^^


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